ユークリッドの『原論』とは?-内容から歴史までわかりやすく解説!数学の平行線公準やピタゴラスの定理まで

私たちが学校で習う数学。

その基本となる法則や概念の多くが、2000年以上前に書かれた一冊の本に基づいていることを知っていましたか?

今回は、ユークリッドによって書かれた有名な『原論』について、内容から詳しく紹介します。

古代ギリシャの数学者ユークリッドが著した原論は、数学の教科書として、時代を超えて受け継がれてきました。

現代の数式や数学理論に通じる基礎を築いたこの本は、私たちの「学校の教科書」にも多数登場します。

 
数学の博士
2000年前経って今も色あせない『原論』の魅力を紹介していきます!
目次

『原論』とは?-数学の幾何学に関する本

『原論』(げんろん)は、古代ギリシャの数学者ユークリッドがまとめた「数学と幾何学の本」です。

紀元前300年頃に書かれたとされるこの本は、13巻からなり、約2000年にわたって数学教育や研究の基礎となりました。

『原論』は、数学の基本的な原理や法則を、論理的に組み立てられた順序で説明しています。

この本の目的は、数学的な「公理」(あたりまえの原則)や「定義」(用語の意味)から始め、論理的に「定理」(証明された結論)を導くという考え方を示すことにあります。

ユークリッドは、すべての数学の結論が基本的な公理から証明によって導かれるべきだと考えました。

このように『原論』は、単なる数学の知識の集まりではなく、論理的な推論と証明を通じて数学を体系的に整理したものです。

この本は「数学的な思考の仕方」を示した最初の書物とも言われています。

原論を書いた人物-ユークリッド

ユークリッドは紀元前300年ごろ、古代ギリシャの数学者であり、主にエジプトのアレクサンドリアで活躍しました。

彼の生涯について詳しい記録は残っておらず、出身地や出生・死亡年もはっきりしていません。

アレクサンドリアで学問に励み、多くの学生に数学を教えたとされています。

ユークリッドは「幾何学の父」と称され、その功績は主著『原論』に集約されています。

『原論』の主な内容

『原論』の内容は13巻に分かれており、それぞれが数学や幾何学の異なる分野に焦点を当てています。

第1巻:平面幾何学の基礎

第2巻:幾何代数

第3巻と第4巻:円に関する性質

第5巻:比例の理論

第6巻:相似の理論

第7巻から第9巻:数論

第10巻:無理数の理論

第11巻から第13巻:立体幾何学

各巻の内容について、詳しく解説をします。

第1巻:平面幾何学の基礎

第1巻は、『原論』の土台となる内容です。ユークリッドはまず、点や線、角度、面積といった基本的な「定義」を紹介し、いくつかの「公理」や「公準」を示しました。その中でも特に有名なのが「平行線公準」(第5公準)で、これはユークリッド幾何学の基礎にある重要な概念です。この巻では、以下のような内容が含まれています。

・三角形の合同:二つの三角形がどのような条件で合同(全く同じ形と大きさ)になるかを説明します。

・ピタゴラスの定理:直角三角形の辺の関係を表す有名な定理です。この定理は、直角三角形における斜辺の長さを他の2辺の長さから求めるために使われます。

第2巻:幾何代数

第2巻は、代数的な関係を幾何学的に表現する「幾何代数」の内容を扱います。現代でいう「平方」や「積」を図形として捉え、それらを利用した法則を証明します。たとえば、次のような命題があります。

・長方形と平方の分割:ある線分を複数の部分に分け、そのそれぞれを使って面積を求める方法。

・代数的な恒等式の幾何学的表現:例えば  のような式を図形として表し、図形を使って証明するという方法が説明されています。

第3巻と第4巻:円に関する性質

第3巻と第4巻では、円の性質について詳しく取り上げられています。

・第3巻:円周や弧に関する性質、円の接線、角度の関係が紹介されています。例えば、円の接線が円周に接する点における接線の特性などを証明しています。

・第4巻:円に内接・外接する多角形の性質を考察します。たとえば、三角形や四角形が円に内接するための条件や、円に外接するための条件を示しています。

第5巻:比例の理論

第5巻は、比例(比率)の理論についてです。この巻で使われる比例の概念は、エウドクソスの理論に基づいており、現代の「比率」や「割合」の基礎となっています。この巻の特徴は、整数だけでなく分数や無理数にも比例の概念を適用できる点です。

比と比例の定義:異なる量の関係性を比によって表現し、同様の比率であることを「比例」と呼びました。

・比例に基づく命題の証明:三角形や平行四辺形などにおいて、辺の比率がどのように影響するかを証明しています。

第6巻:相似の理論

第6巻では、相似(似た形の図形)の概念について議論しています。現代の幾何学でいう「相似」の基礎となる内容です。

・相似の定義:ユークリッドは、相似とは対応する辺の比が等しい図形と定義しています。

・相似図形の性質:三角形や多角形が相似であるための条件について説明し、相似図形の面積や体積がどのように拡大縮小されるかを示しています。

第7巻から第9巻:数論

第7巻から第9巻は、数論の内容で、特に自然数の性質に焦点を当てています。これは『原論』の中でも重要な部分であり、現在も数学教育で学ばれています。

・第7巻:数の基本的な性質について、例えば「偶数」「奇数」「素数」「合成数」などの定義を説明し、数の法則を証明しています。

・第8巻:比の連続性について議論し、特定の数列や幾何級数の概念に似た法則を導き出しています。

・第9巻:ユークリッドの互除法(最大公約数を求める方法)が登場し、素数が無限に存在することの証明も行われています。

第10巻:無理数の理論

第10巻では、「無理数」と呼ばれる、分数では表せない数について詳しく説明しています。この無理数の概念は、ギリシャ数学において重要なテーマでした。

例えば、√2のような数が無理数であることが証明され、無理数と有理数の違いが示されています。

第11巻から第13巻:立体幾何学

第11巻から第13巻は、立体幾何学、つまり三次元の図形についての内容です。

・第11巻:直線、面、角度の関係や、平行四辺形、平行六面体などの立体図形の性質が説明されています。

・第12巻:円柱、円錐、球の体積を求める方法が扱われています。これには、後の微積分に通じる「極限の考え方」が含まれています。

・第13巻:プラトン立体と呼ばれる5種類の正多面体(正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体)の性質を取り上げ、それらが持つ完全な対称性について論じています。

『原論』は、ただの数学の教科書というだけでなく、すべての証明を論理的に積み重ねていく「公理的手法」の基礎を築きました。

このアプローチによって、数学は一貫した論理のもとに構築され、確実性が保証される学問となったのです。

『原論』の重要なポイント

『原論』の重要なポイントは、数学をどのように論理的に組み立てていくかの基礎を示した部分にあります。

公理と証明:ユークリッドは、すべての数学的な結論が基本的な「公理」から導かれると考えました。

平行線公準:ユークリッドの第5公準とも呼ばれるこの平行線のルールは、後に「ユークリッド幾何学」と「非ユークリッド幾何学」の分岐点として重要視されました。

比例と相似:ユークリッドの比例と相似の考え方は、現代の代数学や幾何学の基礎となっています。

ユークリッドの互除法:ユークリッドは、2つの数の最大公約数を求める簡単な方法を考案しました。この方法「ユークリッドの互除法」として知られています。

内容を詳しく知りたい人向けに説明をします。

(少し難しい内容も含まれているので、適度に読み飛ばしながら読んでも大丈夫です。)

1. 公理と証明

ユークリッドは、すべての数学的な命題(定理や主張)が「公理」と呼ばれる基本的な前提から論理的に導かれるべきだと考えました。

この「公理と証明」の体系は、現代数学の基礎ともなっています。ユークリッドは、証明を始める前にまず「定義」「公理」「公準」を定め、これらを基礎に論理的なステップを重ねて結論にたどり着く方法を採りました。

定義:数学の基本的な概念や用語の意味。たとえば、「点とは、部分を持たないものである」「線とは幅を持たない長さである」など、基本的な形や概念の意味が定義されます。

公理:証明の土台となる、誰もが認める基本的な真理です。『原論』では、「等しいものに等しいものを加えれば、結果も等しい」など、常識的に認められる事柄が公理として示されます。

公準:幾何学に特有のルールです。たとえば、「2点を結ぶ直線はただ1つ存在する」といった幾何学の基礎となる仮定です。

ユークリッドは、これらを組み合わせ、証明の各ステップで「論理的に導かれること」を強調しました。

2. 平行線公準(ユークリッドの第5公準)

平行線公準は、ユークリッド幾何学における重要な要素の一つです。

「ある直線と2本の直線が交わるとき、同じ側にある内角の和が2直角(180度)よりも小さいなら、その直線は無限に延長すると交わる。」

簡単に言うと「ある条件のもとで2本の直線が平行になるかどうか」を決める基準です。

次のような状況を考えてください:

1本の直線が2本の別の直線に交わるとき、その交わりによってできる内角が、ある条件を満たすと、2本の直線は無限に延長しても交わらない、つまり「平行」であると考えられます。このルールを平行線公準と呼びます。

この公準は直感的には理解できるものの、実は「証明ができない前提条件」として扱われるもので、後の数学者たちがこの公準を使わない幾何学(「非ユークリッド幾何学」)を作り出すきっかけにもなりました。球や湾曲した面での幾何学ではこの平行線公準が成立しないので、これによって数学の新しい分野が広がることになったのです。

3. 比例と相似

「比例」と「相似」は、形や大きさに関する数学の基本的な概念です。

小学校や中学校の算数や数学で習うので、聞いたことがある人も多いと思います。

比例:比例は、ある2つの数の比が一定であることを意味します。たとえば、2つの長方形があったとして、縦と横の長さが同じ比率(たとえば1:2)であれば、形の違いがないため、どちらも同じように見えます。ユークリッドはこの「比」を使って、数学の様々な性質を導き出しました。たとえば、2つの直線の長さが常に同じ比率であれば、それらは特定の方法で変換されても形が保たれる、という性質が示されます。

相似:相似は、形は同じだが大きさが異なる図形のことです。たとえば、小さな三角形とそれを拡大した大きな三角形は「相似」であるといいます。相似図形の特徴は、対応する辺の長さの比が等しいことです。ユークリッドは、この性質を使って三角形や多角形の相似の条件を証明し、幾何学の中で「形の同じ性質」を示す基準を築きました。この相似の概念は、建築や設計、地図などで使われる拡大・縮小に関する問題に役立ちます。

このように、比例と相似の考え方を通じて、ユークリッドは異なる「図形の共通性や形の保たれる条件」を説明しました。

4. ユークリッドの互除法

ユークリッドの互除法(アルゴリズム)は、2つの自然数の最大公約数を効率的に求める方法です。これは次のようにして行われます。

1. 2つの数のうち、大きい方を小さい方で割り、余りを求める。

2. 余りが0でなければ、小さい数を新しい大きい数、余りを新しい小さい数として、再び割り算を行う。

3. 余りが0になるまでこの手順を繰り返し、最後に余りが0になったときの小さい数が最大公約数です。

たとえば、18と24の最大公約数を求めるには次のようにします。

• 24 ÷ 18 = 1余り6

• 18 ÷ 6 = 3余り0

したがって、18と24の最大公約数は6です。

この方法は計算が簡単で、非常に効率的です。この互除法は現在も、数論や計算機科学など幅広い分野で活用されています。

『原論』に関する面白いエピソード

ユークリッドの『原論』には、いくつか興味深いエピソードがあり、当時の学問への影響や後世の反応を知る上で面白いものです。

ただの数学書としてだけでなく、時代や文化に深く影響を与えた書物として評価されています。 

1. プトレマイオス王とのエピソード

『原論』が編まれたアレクサンドリアにはプトレマイオス王が君臨しており、彼も学問に興味を持っていました。

あるとき、プトレマイオス王がユークリッドに「幾何学を学ぶためのもっと簡単な道はないか?」と尋ねたところ、ユークリッドはこう答えたと言われています。

「幾何学には王の道はありません(There is no royal road to geometry.)」

つまり、幾何学はどんな人でも基本から学び、しっかりと理解しなければならない学問だと伝えたのです。この言葉は、「何事も近道はなく、地道に学ぶことが大切だ」という意味で有名になり、現在でも引用されることがあります。

2. 第5公準を巡る謎

『原論』における「第5公準」(平行線公準)は、当時の数学者たちにとって非常に難解で、奇妙に感じられる部分でした。

第5公準は「ある直線が2つの直線に交わるとき、同じ側にある内角の和が2直角(180度)より小さいなら、この2つの直線は延長すると交わる」というものですが、これは直感的にわかりにくいものでした。多くの数学者たちは「第5公準は他の公理から導けるはずだ」と考え、証明しようとしましたが、誰も成功しませんでした。

結果的に19世紀に「非ユークリッド幾何学」が生まれ、平行線公準は独立した公理であることがわかりました。この過程は数学史上の大きな発見で、幾何学の世界を一変させました。

3. ユークリッドの影響を受けたニュートンの「プリンキピア」

アイザック・ニュートンは、物理学の理論を体系化する際に『原論』を非常に参考にしました。

ニュートンの著書『プリンキピア』は、「ニュートン力学」を論理的に整理したもので、ユークリッドの『原論』のスタイルを踏襲しています。ニュートンもまた、公理を示し、それに基づいて論理的に結論を導く形式を採用しました。

このことから、ニュートンはユークリッドを「真の科学的手法」を確立した先駆者として高く評価していたことがうかがえます。

4. 非ユークリッド幾何学の発見による『原論』の見直し

19世紀には、ユークリッドの幾何学に対する見方が大きく変わる出来事がありました。

ユークリッドの「平行線公準」に疑問を抱いた数学者カール・フリードリヒ・ガウス、ニコライ・ロバチェフスキー、ヤーノシュ・ボヤイが、新しい幾何学の体系「非ユークリッド幾何学」を発見したのです。

彼らは、平行線公準を否定した場合にも一貫した幾何学体系が成り立つことを示しました。この発見により、幾何学の枠組みが大きく広がり、ユークリッド幾何学が「絶対的な唯一の真理」ではなくなりました。このエピソードから、科学の進歩において既存の常識を疑うことの重要性がわかりますね。

5. 教育的な影響と「大英図書館の最も借りられた本」

長い間、『原論』は数学教育の基礎として使われ続けました。

実際、大英図書館には多くの『原論』の版が所蔵されており、特に17世紀から19世紀にかけて多くの人に読まれました。19世紀の終わりまで、大英図書館で最も貸し出された本の1つはユークリッドの『原論』だったとされています。

教育機関だけでなく、多くの一般市民が『原論』に触れていたことを意味し、『原論』がどれだけ広範に影響を与えたかを物語っています。

6. 『原論』に込められた「宇宙の秘密」への探求

古代ギリシャでは、数学は「宇宙の法則」を探求する手段とされていました。ユークリッドもまた、数学を通して世界の秩序や真理を理解しようとしました。

そのため、彼の『原論』は単なる数学書というだけでなく、「宇宙の秘密」を解き明かす鍵と考えられていました。特に、正多面体の章(第13巻)は、宇宙の基本的な構造を象徴するものとされ、神秘的な意味を込めて受け止められていました。

このような考え方は、後のプラトンやケプラーにも影響を与え、数学と哲学を結びつける要素として重要な役割を果たしています。

原論に関する歴史

ユークリッドの『原論』は、数学史と科学史の重要な分岐点であり、その影響は古代から現代まで続いています。

紀元前300年ごろ:『原論』の執筆とアレクサンドリア学派

ユークリッドは紀元前300年ごろ、エジプトのアレクサンドリアで『原論』をまとめました。

アレクサンドリアは、プトレマイオス朝のもとで学問の中心地として栄えており、「アレクサンドリア図書館」や研究所などが設立され、多くの学者が集いました。この地でユークリッドは『原論』を執筆し、既存の数学知識を論理的な体系にまとめました。

彼は、数学的命題を「公理」「定義」「命題」という構造に分け、証明によって結論を導く形式を確立しました。

9世紀:イスラム世界への伝播

『原論』は、古代ギリシャから東ローマ帝国(ビザンチン帝国)に引き継がれましたが、9世紀ごろにアラビア語に翻訳され、イスラム世界で広く読まれるようになりました。

翻訳者の一人であるアル=フワーリズミーらの貢献により、イスラム圏の学者たちはユークリッドの幾何学を深く研究し、さらに発展させました。イスラムの数学者たちは、ユークリッドの幾何学の手法を基に代数学や幾何学で多くの進展を遂げ、後にヨーロッパにも影響を及ぼしました。

12世紀:ヨーロッパへの再伝来とラテン語翻訳

12世紀になると、アラビア語からラテン語への翻訳が行われ、『原論』はヨーロッパに再び広まりました。

この翻訳により、ヨーロッパの学者たちも古代ギリシャの数学を体系的に学べるようになり、数学教育の基本教材としての位置を確立しました。これが中世ヨーロッパの数学と科学の発展を助ける重要なきっかけとなりました。

1482年:初の印刷版『原論』の出版とルネサンス期の影響

ルネサンス期には、科学と学問が再び注目され、1482年にヴェネツィアで初の印刷版『原論』が出版されました。印刷技術の発展によって、ユークリッドの『原論』はさらに広く普及し、多くの学者が手に取ることができるようになりました。

『原論』はルネサンス期の科学者や数学者たちの間で必読書となり、彼らの研究を支える基礎的な教科書として広まりました。この時期、ヨーロッパの数学教育の標準的な教材として用いられ、科学革命においても重要な役割を果たしました。

17世紀:近代科学への影響

17世紀には、デカルト、ガリレオ、ニュートンといった近代科学の先駆者たちが『原論』から大きな影響を受けました。

特にデカルトはユークリッド幾何学の体系を参考に「座標平面」を発明し、幾何学と代数学を融合するきっかけを作りました。これにより、解析幾何学が生まれ、さらに微分積分学の発展にもつながりました。

また、ニュートンは『原論』の論理的構造を参考に、物理学の法則を数学的に体系化しました。こうして、ユークリッドの論理的アプローチが近代科学の基礎となり、論理的推論を重視する風潮が生まれました。

19世紀:非ユークリッド幾何学の登場

19世紀になると、ユークリッドの幾何学に疑問を持つ数学者たちが現れ、「非ユークリッド幾何学」が誕生しました。

特に、カール・フリードリヒ・ガウス、ニコライ・ロバチェフスキー、ヤーノシュ・ボヤイといった数学者たちが、ユークリッド幾何学の平行線公準を別の視点から見直し、新しい幾何学体系を築きました。

これにより、数学の枠組みが広がり、物理学や相対性理論の発展にもつながります。非ユークリッド幾何学の登場は、幾何学を多様な視点から探求する可能性を示し、数学の進化に大きな影響を与えました。

現代:数学教育と論理学の基礎としての『原論』

現在も『原論』は、数学教育や論理学の入門として評価されています。

ユークリッドが示した「公理と証明の体系」は、現代数学の基礎であり続けており、幾何学や数論に関するユークリッドの証明方法は今も参考にされています。また、論理的思考や証明方法を学ぶ上での教材としても重要です。

科学的思考の基礎を学ぶための不朽の名作として、『原論』は今も世界中の教育現場で用いられています。

『原論』が後世に与えた影響

『原論』は長い間、数学の教科書として使われ続け、特に17世紀にはデカルトやニュートンなどの科学者たちがユークリッドの論理体系を参考にして、自らの理論を構築しました。

  • 数学教育の基礎を築いた
  • 科学や哲学にも影響を与えた
  • 新しい幾何学の発展

こうして『原論』は、現代にまで受け継がれる数学や論理の基礎を築いたといえます。

1.数学教育の基礎を築いた

『原論』は、長い間、数学を学ぶための教科書として広く使われました。

この本は、数学的な考え方や論理的な証明方法を順序立てて教えてくれるので、特に西洋の教育で重要視されてきました。

論理的思考の訓練

『原論』では、公理(基本的なルール)から論理的に定理を証明する方法を教えてくれます。この方法のおかげで、他の分野でも「論理的に考える力」を鍛えることができました。

教科書のモデル

『原論』は単なる知識の集まりではなく、順序立てて理解できるように工夫されていました。この「体系的な学び方」は、現代の教科書にも影響を与えています。

2. 科学や哲学にも影響を与えた

『原論』の考え方は、数学だけでなく、科学や哲学にも影響を与えました。

科学革命の土台

17世紀の科学者たち、例えばニュートンは、『原論』の論理的なアプローチを参考にして、自然現象を説明しようとしました。ニュートンの「プリンキピア」は、『原論』をお手本にし、自然法則を公理から導き出そうとしたものです。

哲学の発展

哲学者たちもまた、『原論』から「証明」の重要性を学びました。特にデカルトは、ユークリッドの論理的な考え方を参考にして、自分の「方法的懐疑」(確実な知識を得るための考え方)を発展させました。

3. 新しい幾何学の発展

ユークリッドの「平行線公準」(第5公準)は、多くの数学者が「証明しにくい」と感じ、挑戦し続けました。その結果、19世紀には「非ユークリッド幾何学」という新しい分野が生まれました。

非ユークリッド幾何学と相対性理論

アインシュタインの相対性理論では、空間が曲がっている可能性が考えられるため、非ユークリッド幾何学が重要な役割を果たしました。このように、『原論』をきっかけに生まれた考え方が、現代の科学にもつながっています。

4. 数学の歴史における特別な位置

『原論』は、数学史においても非常に重要な存在です。中世のイスラム世界でもアラビア語に翻訳され、その後ヨーロッパに再び広まっていきました。ルネサンス期には、印刷技術の発展により、『原論』が多くの人に読まれるようになり、数学の発展を大いに助けました。

『原論』は長い間、数学教育の中心的な教科書でした。現在でも、この本で学ぶ「公理から証明を導く」方法が、数学の基本として広く受け入れられています。

『原論』は、数学を初めて体系的にまとめ、証明によって理論を支えるという方法を示した、非常に重要な書物なのです。

まとめ

ユークリッドの『原論』を通じて、数学がただの数字や図形の学問ではなく、考える力や論理的な思考を鍛えるものだと感じてもらえたでしょうか?

数学は、このように古代から現代まで人々に影響を与え続けている壮大な物語です。

ほかにも、数学の世界の奥深い歴史や、日常に役立つ記事を掲載しています。

興味のある人は、ぜひさらに深い「数学の旅」を楽しんでください〜!

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