【天才】ニュートンが残した数学の功績-微積分から二項定理・無限級数展開まで-

「アイザック・ニュートン」と聞くと、万有引力の法則を思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、彼の功績はそれだけではありません。ニュートンは数学の世界にも革命をもたらした天才でした。

今回は『ニュートンが残した数学的な功績』について紹介します!

彼が発明した微積分は現代科学の礎となり、ニュートンの二項定理は無限級数の扉を開きました。

さらに、方程式の解を素早く求めるニュートン法、数値解析や物理学に応用される級数展開など、彼の発見は今も私たちの生活に密接に関わっています。

この記事では、ニュートンが数学の世界に残した驚くべき功績を、わかりやすく解説します。

 
はな
「数学の歴史を変えた天才の思考」を、一緒にのぞいてみましょう!

ニュートンが残した数学的な功績

アイザック・ニュートン(Isaac Newton, 1643–1727)の数学的な功績は多岐にわたります。

『ニュートンの生涯と物理分野の功績』についてはこの記事で書いています↓

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1. 微積分の発明

ニュートンは「流率法(Method of Fluxions)」を用いて微分積分学の基礎を築きました。これはゴットフリート・ライプニッツとは独立に発見され、両者の間で優先権をめぐる論争(微積分論争)が起こりました。

<ニュートンの微積分の特徴>

・微分の概念:「流率(Fluxion)」を導入し、関数の瞬間的な変化率を記述

・積分の概念:「流量(Fluent)」を用いて面積を求める手法を考案

・基本定理の発見:微分と積分が互いに逆の操作であることを明らかにした(微積分学の基本定理)

2. 二項定理(ニュートンの二項定理)

ニュートンは、整数指数に限らず任意の実数指数の二項展開を発見しました。これを「ニュートンの二項定理」といいます。

(n,k)は一般化された二項係数を含み、小数や負の指数でも適用可能な級数展開をすることができます。

 
先輩
具体例については後ほど説明します。

3. 数値解析の発展(ニュートン法)

ニュートンは、方程式の数値的な解法の一つである「ニュートン法(Newton’s method)」を開発しました。

これは、非線形方程式 f(x)=0の近似解を求める反復法で、以下の漸化式で表されます。

これは現代の数値解析でも重要な手法の一つであり、工学・物理学・経済学などの分野で広く利用されています。

4. 無限級数の研究

ニュートンは無限級数展開の研究を深め、三角関数・指数関数などを無限級数で表す方法を発展させました。

彼は特に 逆三角関数の級数展開 を求め、円の面積や重心を計算するのに利用しました。

例:逆正接関数の級数展開(マクローリン展開の一種)

これらの級数展開は、後の数学の発展に大きな影響を与えました。

5. 幾何学と解析幾何学

ニュートンは古典的なユークリッド幾何学だけでなく、解析幾何学の方法を用いて物理現象を数学的に記述しました。

特に『プリンキピア(Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica)』では、円錐曲線(楕円・放物線・双曲線)を使って惑星の運動を記述しました。

これは後に天体力学の発展につながり、ケプラーの法則を数学的に証明するのに用いられました。

『プリンキピア』についてはこの記事に詳しく書いています↓

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︎ニュートンのそれぞれの数学的な功績について、詳しく説明をしていきます。

1.ニュートンの微積分の発明(流率法)

ニュートンは、現代の微積分の元となる「流率法(Method of Fluxions)」という考え方を生み出しました。この方法では、物の動きや変化を数学的に表現することを重視していました。簡単に言えば、「ある量が時間とともにどのように変化するのか」を考える方法です。

ニュートンの微積分は、次の二つの概念から成り立っています。

  1. 流率(Fluxion)… 現代の「微分」にあたる考え方で、瞬間的な変化の割合を表す。
  2. 流量(Fluent)… 現代の「積分」にあたる考え方で、変化の合計を求める。

1.1. ニュートンの微分の考え方(流率)

ニュートンは、物体の位置や数値が時間とともに変化する様子を「流れる量(Fluent)」と考えました。そして、その変化の速さを「流率(Fluxion)」と呼びました。

例えば、ボールが転がっているとき、その位置 x は時間とともに変わります。このときの瞬間的な速さ(変化率)を x’(エックス・ダッシュ) で表しました。(xの上に・をつける表記もあります。)

これは、現代の微分にあたります。

x’ = dx/dt

この考え方を使うと、速度や加速度のような運動の性質を数学的に記述することができます。

例えば、位置 x の流率(微分) x’ は速度にあたります。そして、速度 x’ の流率(微分) x’’ は加速度にあたります。

このように、ニュートンは物理の問題を解決するために微分の考えを使いました。

1.2. ニュートンの積分の考え方(流量)

逆に、ニュートンは「流率(Fluxion)」が分かっているとき、元の「流れる量(Fluent)」を求める方法も考えました。これは現代の積分にあたります。

例えば、速度(流率)が分かっているとき、そこから位置を求めるには積分を行います。

x = ∫ x’ dt

この操作は、流れの総量(面積や距離など)を求めるために使われました。

さらに、ニュートンは「微分と積分が逆の関係にある」ことに気づきました。これは、微積分学の基本定理と呼ばれます。

d/dx ∫ f(x) dx = f(x)

つまり、積分すると元の関数に戻ることを発見したのです。この考えは、現代の微積分学の基礎になっています。

1.3. ニュートンとライプニッツの微積分論争

ニュートンが微積分を発明したのと同じ時期に、ドイツの数学者ゴットフリート・ライプニッツも独自の方法で微積分を発見しました。しかし、二人の方法にはいくつかの違いがありました。

ニュートンは「流率(Fluxion)」という考え方を使って運動を数学的に記述しましたが、ライプニッツは「微小変化(dx, dy)」を使った数学的な手法を発展させました。また、ニュートンの記法は x’ のようにダッシュをつけるものでしたが、ライプニッツは dx/dt のような記号を用いました。

ニュートンは物理学への応用を重視し、ライプニッツは数学そのものの発展を重視していました。そして、後にライプニッツの記法(dx, dy, ∫)のほうが計算しやすく、より一般化しやすいことが分かり、現在ではライプニッツの記法が標準になっています。

1.4. ニュートンの微積分の応用

ニュートンは、微積分を使って次のような問題を解決しました。

まず、物体の運動に応用しました。速度は位置の変化率なので、v = x’ = dx/dt、加速度は速度の変化率なので、a = x’’ = dv/dtとなります。この考え方を発展させて、ニュートンは「運動方程式F = ma」を定式化しました。

さらに、微積分を使って惑星の運動を解析しました。ケプラーの法則を数学的に証明し、「万有引力の法則F = GMm/r²」を導出しました。これにより、天文学の発展に大きく貢献しました。

また、微分を使って曲線の接線を求める方法を確立しました。これは、現代の関数の微分に相当します。

さらに、積分を使って面積の計算を行いました。例えば、円の面積や放物線の面積を求めることができるようになりました。

このように、ニュートンの微積分は天文学・物理学の発展に大きく貢献しました。

2.ニュートンの二項定理

ニュートンの二項定理は、任意の指数(整数・分数・負の数を含む)に対して二項展開を可能にする公式です。

普通の二項定理は、

という形で表されます。

しかし、ニュートンはこの公式を整数以外の指数にも拡張しました。

具体的には、指数が分数や負の数でも無限級数として展開できるというのがニュートンの二項定理の革新的な点です。

2.1ニュートンの二項定理の公式

ニュートンの二項定理は、次のように表されます:

ここで、二項係数 nCk は一般化された形をとります:

nCk = n(n-1)(n-2)…(n-k+1) / k!

つまり、通常の組み合わせの公式を整数以外の r にも適用できるように拡張したものです。

2.2二項展開の具体例

例1:指数が負の数の場合

(1 + x)^(-1) を展開すると、(1 + x)^(-1) = 1 – x + x^2 – x^3 + x^4 – …となります。

これは、無限等比級数の展開結果と一致しており、数学的に非常に重要です。

例2:指数が分数の場合

(1 + x)^(1/2) を展開してみます。(1 + x)^(1/2) = Σ (1/2 C k) x^k

まず、最初のいくつかの項を計算すると、

• 1/2 C 0 = 1

• 1/2 C 1 = 1/2

• 1/2 C 2 = (1/2)(-1/2) / 2! = -1/8

• 1/2 C 3 = (1/2)(-1/2)(-3/2) / 3! = 1/16

よって、展開すると、

(1 + x)^(1/2) = 1 + (1/2)x – (1/8)x^2 + (1/16)x^3 – …

これは、平方根の近似計算に使われる重要な公式です。

ニュートンの二項定理は、整数に限らず負の指数や分数指数にも適用できる二項展開の拡張版です。これにより、無限級数による近似計算が可能となり、数学・物理・工学において非常に重要な役割を果たしました。

3.ニュートン法(Newton’s Method)

ニュートン法は、非線形方程式  の数値解(近似解)を求めるための反復的な手法です。

この方法は、関数の接線を利用して、より正確な解を求めるというアイデアに基づいています。

3.1ニュートン法の基本的な考え方

関数 f(x) の根(ゼロ点)を求める際に、ニュートン法では次のように近似を更新していきます。

1. 初期値を設定

まず、適当な初期値 x₀ を選びます。

2. 接線を使った近似

関数 f(x) のグラフ上の点 (xₙ, f(xₙ)) における接線の方程式は、微分 f’(xₙ) を使って次のように表されます。

y = f(xₙ) + f’(xₙ) (x – xₙ)

この直線が x 軸と交わる点 xₙ₊₁ を新しい近似値として採用します。

つまり、y = 0 として xₙ₊₁ を求めると、

0 = f(xₙ) + f’(xₙ) (xₙ₊₁ – xₙ)

これを変形すると、次のニュートン法の反復式が得られます。

xₙ₊₁ = xₙ – f(xₙ) / f’(xₙ)

3.2ニュートン法の具体例

例1:平方根の計算

平方根を求める問題を考えます。例えば、√2 を求めるには、次の方程式の解を探せばよいです。

f(x) = x² – 2 = 0この関数の導関数は、f’(x) = 2x

したがって、ニュートン法の反復式は、xₙ₊₁ = xₙ – (xₙ² – 2) / (2xₙ)

適当な初期値(例えば x₀ = 1.5)を設定し、この式を繰り返し計算すると、より精度の高い近似値が得られます。

<計算の流れ>

1. x₀ = 1.5

2. x₁ = 1.5 – (1.5² – 2) / (2 × 1.5)

= 1.5 – (2.25 – 2) / 3

= 1.5 – 0.0833

= 1.4167

3. x₂ = 1.4167 – (1.4167² – 2) / (2 × 1.4167)

≈ 1.4142 (ほぼ √2)

数回の反復で高精度な近似が得られます!

例2:三角関数の方程式

cos(x) – x = 0

この方程式の解をニュートン法で求めます。

導関数を計算すると、

f(x) = cos(x) – x

f’(x) = -sin(x) – 1

ニュートン法の反復式は、

xₙ₊₁ = xₙ – (cos(xₙ) – xₙ) / (-sin(xₙ) – 1)

初期値 x₀ = 0.5 を取ると、数回の計算で収束します。

3.3ニュートン法の特徴

ニュートン法のメリット

・収束が速い:初期値が十分に良いとき、二次収束(誤差が2乗のオーダーで小さくなる)するため、非常に速く正確な解に近づく。

・幅広い関数に適用可能:非線形方程式の解法として、数学・物理・工学・金融など様々な分野で利用される。

ニュートン法のデメリット

・初期値による影響が大きい:初期値が悪いと、収束しなかったり誤った解に向かうことがある。

・導関数の計算が必要:関数の微分が求められない場合や、計算が難しい場合は適用が難しい。

・停留点(f’(x) = 0)での問題:分母に微分 f’(x) が含まれるため、ゼロになると計算不能。

3.4ニュートン法の応用分野

ニュートン法は、多くの分野で利用されています。

  • 数値解析:ルート計算、非線形方程式の解
  • コンピュータグラフィックス(CG):光線追跡(レイトレーシング)
  • 機械学習:最適化(ニュートン-ラフソン法)
  • 金融工学:オプション価格の計算(ブラック-ショールズ方程式)

<ニュートン法のまとめ>

1.ニュートン法は非線形方程式の数値解法で、接線を用いた反復計算によって解を求める。

2.反復式は xₙ₊₁ = xₙ – f(xₙ) / f’(xₙ) で表される。

3.収束が速く、高精度な解を得られるが、初期値の選択や導関数の計算が課題となる。

4.数値解析、物理、金融など幅広い分野で応用されている。

ニュートンの数学的功績の中でも、現在に至るまで実用的に使われ続けている重要な手法の一つです!

4.ニュートンの無限級数の研究

アイザック・ニュートンは、無限級数(infinite series)の研究において重要な貢献をしました。彼は、関数を無限級数として表す手法を発展させ、それを計算に応用しました。

特に、三角関数や指数関数などの関数の級数展開を研究し、これを円周率の計算や物理学に応用しました。

4.1. 無限級数とは?

無限級数とは、無限個の項を持つ和のことを指します。たとえば、一般的な幾何級数:

S = a + ar + ar^2 + ar^3 + …

のような形をしています。ニュートンは、これを関数展開にも応用しました。

4.2. 逆三角関数の級数展開

ニュートンは、逆三角関数のマクローリン級数展開(テイラー展開の特別なケース)を発見しました。特に、逆正接関数(arctan) の展開を求めました。

arctan(x) = x – (x^3)/3 + (x^5)/5 – (x^7)/7 + …

この公式は、円周率 π の計算にも用いられました。たとえば、x = 1 を代入すると:

π/4 = 1 – 1/3 + 1/5 – 1/7 + …

となり、この級数を使って π を精度よく計算する方法が確立されました。

4.3二項定理と無限級数

ニュートンは、「ニュートンの二項定理」を用いて、任意の指数の二項展開を発見しました。

特に、(1 + x)^n の展開を無限級数として一般化しました。

(1 + x)^n = Σ (nCk) * x^k  (k = 0 から ∞ までの和)

ここで、nCk は一般化された二項係数を含み、小数や負の指数でも適用可能な級数展開を提供します。

この公式は、級数展開を用いた数値計算の基礎となりました。

例えば、ニュートンはこの公式を用いて √(1+x) を級数展開しました。

√(1 + x) = 1 + (1/2)x – (1/8)x^2 + (1/16)x^3 – …

このような級数展開を使うことで、関数の近似計算が容易になりました。

4.4. 円周率(π)の計算

ニュートンは、円の面積の計算に無限級数を応用しました。彼は、円の方程式を用いて、円の弧長や面積を級数展開で求めました。

例えば、半径1の円の方程式

y = √(1 – x^2)

を考え、ニュートンの二項定理を適用すると:

√(1 – x^2) = 1 – (1/2)x^2 – (1/8)x^4 – (1/16)x^6 – …

この級数を積分することで、円の面積を求めることができます。

4.5. 指数関数・対数関数の級数展開

ニュートンは、指数関数や対数関数の級数展開についても研究しました。

例えば、自然対数の級数展開:

ln(1 + x) = x – (x^2)/2 + (x^3)/3 – (x^4)/4 + …

これは後にテイラー級数として一般化され、関数の数値近似に使われるようになりました。

まとめ:ニュートンが数学に刻んだ偉大な足跡

今回は『ニュートンが残した数学的な功績』について紹介しました。

ニュートンは、微積分の発明、二項定理の拡張、数値解析の発展など、数学の世界に革命をもたらしました。

数学の歴史にはニュートン以外にも数々の天才たちが登場し、それぞれが新たな発見を積み重ねてきました。

他の記事では、数学の偉人たちの功績や、日常に潜む数学の面白さについても紹介しています。

ぜひ、次の記事も読んで、数学の世界をさらに楽しんでください〜!!

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